【なかむら 酵母無添加 25度 720ml】
以下、杜氏である中村慎弥氏による熱い文章をご紹介させていただきます。
●酵母無添加の経緯と考察
私が蔵に戻った12年前(2012年頃)、まず先輩に教えられたのは「白麹と黒麴を一緒に仕込んではいけない」と「酵母無添加などもってのほか」でした。誤解を恐れずに申し上げますと、焼酎蔵は基本的に税務署からの目が特に厳しいので、万が一”腐造”でもしてしまった日には大変なお叱りを受ける事になります。ですので、なるべくリスクを旨さず安心安金な焼酎造りを心掛けましょう、というのが鉄の掟でした(厳密には今でもその風潮は多く残っております)ただ、多くの実験を繰り返す中で気付いた事は、昔と今とで最も変化した事は「蔵の衛生管理が行き届いている」という事です。昔は、お世辞にも綺麗とは言えない古く小さな蔵でしたが、今は蔵人全員の努力の甲斐あって本当に衛生管理を保つ事が出来ております。そうする事で長年蔵に棲み付く蔵付き酵母が棲みやすく生きやすい環境となり、逆にそれを阻害しようとする悪い菌はおとなしく身を潜めてくれるというメカニズムとなっております。また、現在通常の銘柄に使用している「鹿児島2号酵母」という酵母(純粋酵母)は、鹿児島県酒造組合が養しており、安定的で申し分ない発酵が見られるのですが、気候環境・麹の力次第ではこれらの純粋酵母よりも無添加法の方が発酵が旺盛という事実も、チャレンジして初めて気付く菌の底力だったように思います。
また、焼酎造りにおいて酵母と言えばやはり「香り」に寄与する所が多くございますが、酵母無添加は野性的というより実は素朴さが勝っております。しかし、それは決して物足りないという意味での素朴さではなく、芯のある上品な穏やかさ、素直さという表現が正しいように感じており、造り手として納得の味わいを表現出来たと思っております。
(有)中村酒造場 杜氏 中村慎弥
【テイスティングコメント】
【テイスティングコメント】比較的ワイルドな印象の三種混合麺に比べ、非常にマイルドな味わいの酵母無添加。同じ原料(原料米・芋)を使い、ここまで異なる酒質になる事が、正に菌の力だと思い知らされます。上品な穏やかさ、甘さ、素直さの中に杯を重ねる歓びを感じる事が出来ます。
たにもと屋としても、彼が長年取り組んできたことが形となってお客様の手元に届くことを大変嬉しく思います。中村酒造場でしか造れない焼酎の価値、本気で取り組む姿勢、蔵の伝統の中から生み出される懐かしくも新しい味わい。中村酒造場が魅せる価値ある焼酎を是非、ご堪能ください。